耳には聴こえないけれど、心には届く音。ハイパーソニック・エフェクトとは?
更新日:2025-07-01
音・周波数
聴こえない音が私たちに届いている?
ハイパーソニックという言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは「超高周波音」、つまり人間の耳では聴こえないほど高い周波数を持つ音のことを指します。一般的に私たちが聴こえる音の範囲は20Hz〜20,000Hz(20kHz)程度と言われていますが、それを超える音は「無音」として扱われてきました。しかしこの“聴こえない音”が、実は私たちの体や脳にちゃんと届いていて、しかも深いリラックスや脳の活性化をもたらしていることが研究で明らかになってきたのです。これが「ハイパーソニック・エフェクト」と呼ばれる現象です。
脳が反応する、不思議な音の力
この現象を突き止めたのが、大橋力(おおはしちから)博士です。彼は、CD音源のように20kHzで切り落とされた音と、それ以上の超高周波が含まれた自然音を使い、脳の反応を比較する実験を行いました。その結果、聴こえないはずの超高周波があるときの方が、脳の特定の部位が活性化し、リラックスを示すα波も増えることがわかったのです。さらに、快適感や集中力が増すという主観的な変化まで報告されました。つまり、私たちの身体は「聴こえなくても音を感じ取っている」ということです。
自然の中にある“聴こえない癒し”
ハイパーソニックが含まれる音とは、たとえば自然の中の音──滝の水しぶき、森の中の虫の羽音、風に揺れる木々の葉擦れ、あるいは遠くで鳴く鳥のさえずりなどです。人の声や楽器の中にも、倍音としてごく高い周波数が含まれている場合があります。こうした音に私たちは無意識のうちに包まれていると、神経が落ち着き、呼吸がゆっくりになり、脳がクリアになるような感覚になります。特に日々の生活で多くの情報にさらされている現代人にとって、こうした“耳に聴こえない癒し”は、見落とされがちですがとても大きな意味を持っているのです。
耳ではなく「体で聴く」時代へ
では、なぜこのような聴こえない音に体が反応するのでしょうか? はっきりとした仕組みはまだ完全には解明されていませんが、皮膚や骨、あるいは細胞そのものが微細な振動に反応しているのではないかと考えられています。音は空気の振動として伝わるだけでなく、体の水分や組織を通して共鳴を起こします。耳で聴くという感覚だけでなく、「体で聴く」「全身で受け取る」というような新しい音の捉え方が、これからは必要になってくるのかもしれません。
音を「波動」として感じる未来へ
ハイパーソニック・エフェクトの面白さは、音が聞こえなくてもその場に“あるだけで”効果を発揮するという点です。これはヒーリングやエネルギーワークにも通じる考え方です。たとえばシンギングボウルや自然音を使ったセラピーでは、倍音や超高周波成分を多く含んだ音が用いられています。理屈ではなく、ただ「気持ちいい」「落ち着く」と感じる音こそが、今の時代に必要とされているのかもしれません。高性能なオーディオ機器を使わなくても、自然の中に身を置くこと、呼吸や声の響きを感じることでも、私たちは十分にこの恩恵を受け取ることができます。
これからは、どんな音に囲まれて生きるかが、心と体の状態を大きく左右する時代です。音は情報であり、波動であり、エネルギーです。耳に聴こえなくても、意識に響く音がある。そのことに気づいたとき、音の世界はもっと深く、私たちに寄り添ってくれるようになるでしょう。